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【Mr.MOJOの吉祥寺奇譚】第六話 焼き鳥屋てら 吉祥寺本店

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【Mr.MOJOの吉祥寺奇譚】第六話 焼き鳥屋てら 吉祥寺本店
※この物語はフィクションです




 白レバーのパテを舐めながら白ワインをオンザロックで。邪道かも知れぬが酔い覚ましにはこれくらいが丁度よい。
 少しずつ胃が活性化してきて、ようやく昨日の酒が抜けてきたようだ。ぼんじりと卵黄添えのつくねを追加で頼み、食欲を満たす。〆は何にしようかと悩みメニューを睨みつける。視線の先には豆柴。
 ……マメシバ??
 店主の寺田氏に訊ねると名前はツクネというらしい。そうかツクネか……いやいや、そうじゃない。飲食店にペットありなの? 店主のだから大丈夫? あ、そうですか。憎らしいほど愛らしいではないか。
 日本酒を頼み、追加のつくねを注文する。
 つくねを噛じる私。ツクネと目が合う。
 これは鶏肉であって、ツクネ(犬)ではない。そんな他愛も無いことを考えながら目と舌でツクネ(つくね)を堪能した。
 時は2025年2月某日。
 客商売よく言われることで、ニッパチ(2月8月)は暇だと言うが、此処、焼き鳥「てら」はひっきりなしに客が出入りしていた。
 店主が汗だくで串を焼いている。およそ痩せる気のない体型は繁盛店の驕りか体質か。いや、後者であると信じたい。己の食欲に忠実な店主は、提供する品にもこだわりがあるはずだから。
 ここでしか味わえないぼんじりもナンコツも丁度よいあんばいの塩加減が寺田氏の汗ではないと信じたい。だが程よく酔いの回った私の頭に一抹の不安が兆したのは言うまでも無い。
 女将さんと目が合い、そっと視線を外した。だってしょうがないじゃない。



「そういや、あそこの店いきました?」
 焼き場で顔を赤く染めた寺田が声を掛けてきた。
 私はツクネから顔を上げて固唾を呑む。

〈第七話に続く〉